1. 『稲穂』のおもてなし

料理も、空間も、弾む話も…ここで過ごす時の全てが≪ご馳走≫

日本料理 稲穂_写真

石畳の上に歩を進めれば、次第にこれから出会う時間に期待が膨らむ。

県道31号線から細い路地へ入り、岐阜聖徳学園高校の南向かいに佇む、木々と塀で周りを囲んだ純和風邸宅。これが県内外から訪れる人を魅了してやまない『日本料理 稲穂』である。

四季の移ろいを如実に映し出す中庭をどの部屋からも楽しめる空間作り、他の部屋の声が全く気にならない間取り、外界の殺風景な建造物が視界に入らない木々や塀の配置…全ての要素において≪非日常空間≫としての役割を十二分に果たしている。

「空間も、時間も、会話も…ここでは全てがご馳走でないといけない」と話すご主人の、計算に裏打ちされた≪おもてなしの心≫が随所に感じられる、ここはそういう店なのだ。

夜にはライトアップされ、昼時よりもグッと趣が増す中庭。それを囲む塀。いずれも従業員全員の手入れによって管理・維持されているのだとか。更には空間設計においてもそのこだわりを如何なく発揮。4室ある部屋の天井高が全て異なるのは、それぞれの広さに適した、1つの空間としてのバランスを重んじたが故なのだそうだ。

「全てお客様の目線に立って考えて作った。訪れた全てのお客様が心底日常を忘れられるように。おもてなしの空間に、日常を思い出させる生活感なんかがあっちゃダメ」と言い切るご主人。店にいる間中、お客様の幸せに対して全責任を負う。これこそが本来のおもてなしなのだと、ご主人のお話で気付かされた。

日本料理 稲穂_写真

茶室風の四畳半の間から見える、力強く、しかしながらたおやかに繰り広げられる調理。